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点検評価と課題 分子研リポート1999 | 分子科学研究所

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4.点検評価と課題

分子科学研究所は,1993年から3年毎に外部評価委員による点検評価を行い,その報告が分子研レポートに掲載さ れている。本年度は第3回の外部評価が,6研究系および,錯体化学実験施設に対して実施された。分子科学の指導 的立場にある6名の外国人研究者が,多忙な時間を割いて岡崎を訪れ,数日のインタビューによって的確な評価をさ れたことに篤く感謝する。研究の第一線で活躍されている,国内の著名な研究者による外部評価でも,分子研が四半 世紀の歴史を持つ現況を踏まえ,共同利用研究機関としての在り方を含め,多くの貴重な御批判,御意見をいただい た。

国内外いずれの評価においても,分子研での現在の研究水準については,高い評価が与えられている。分子科学の 発展の指導的役割を果たす意味で,さらに野心的,意欲的な分野開拓型研究を期待する声が大きかったことが印象に 残る。このためにも,分子研の研究者が,所の内外と協力して発展的な研究を行うことが重要である。

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4-1 理論研究系

国内評価委員会開催日:平成11年12月25日 委 員 加藤 重樹 (京大院理,教授)

塚田  捷 (東大院理,教授) 吉川 研一 (京大院理,教授) 中村 宏樹 (分子研,教授) 岩田 末廣 (分子研,教授) 平田 文男 (分子研,教授) オブザーバ 谷村 吉隆 (分子研,助教授)

岡本 祐幸 (分子研,助教授) 米満 賢治 (分子研,助教授) 青柳  睦 (分子研,助教授) 国外評価委員面接日:平成12年1月17日∼18日

委 員 Professor Nicholas Handy (D epartment of C hemistry, University of C ambridge)

4-1-1 点検評価国内委員会の報告

(1)分子科学における理論の位置付け

分子科学における理論の重要性は近年ますます増しており,理論研究グループの存在は 今や不可欠なものであると 認識されるに至っている。研究対象も,小さな分子から,液体,生体高分子などの巨大分子,そして分子性導体へと 大きく広がっている。量子化学に代表される電子状態論,化学動力学とその制御, 分子系の散逸過程の統計力学,分子 集合体の電子相変化の理論,生体分子の シミュレーション等など実験に刺激されながら理論的手法も大いに発展を見 せている。 一方,電子計算機は言うまでもなく理論研究にとって極めて重要な道具となっている。ハードウエアや計算 手法等の計算科学の発展が理論に及ぼした影響も計り知れない。

(2)日本における理論分野の発展と問題点

上述した様な理論の重要性とともに理論が本来持っている幅広い可能性にも拘わらず, 日本ではまだ十分に理論に対 する評価が根付いていない。以前から言われている事であるが,その状況は今もあまり変わっていない。欧米諸国に 比較して理論の重要性に関する認識が依然として低い。この状況を改善するためには,日本の化学に於ける教育の改 善(化学物理関連の科目や学科がない等)及び学界の理論に対する認識の変革が必要である。これは,化学側だけの 問題ではなく,物理の方からも化学との交流を深め学問の融合をもっと推進する努力がなされるべきである。 (3)分子研理論研究系の評価,問題点,期待する役割等

理論研究系では幅広い分野に亙る研究が行われている。特に理論第四の設立により,化学系と物理系様々な分野の 研究者が一堂に会して議論し切磋琢磨できる環境が整い,研究活動が飛躍的に増大した。研究活動・環境について特 に問題点はないと言える。

ただし,分子研は大学と同じ様な体制・構造を採るべきではなく,研究本位の仕事をするべきである。特に,若い 人(助手等)が大学院教育などで時間をとられる様な体制にすべきではない。 また,大学では学生の学力低下が深刻な 問題になっているが,それに巻きこまれないようにもするべきである。つまり,分子研では,博士課程はまだしも, 修 士課程を持つのは良くない。むしろ,大学で博士号を取得した学生の博士研究員等の教育の場としての役割を持つべ

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きであろう。分子研でやるべき事をこのように位置づけることが大切であると考える。また,分子研は,化学と物理 の人間が出入りし易い環境を常に保ち,色々な学問分野の交流の中心になるべきである。様々な研究会の開催等を通 してこれに貢献すべきである。

(4)電子計算機センターの評価と問題点

分子研電子計算機センターが,日本の理論化学発展のために果たした役割は大変大きい。理論研究にとっての数値 計算の重要性は言を待たないが,国際的に最先端の計算機環境を常に整備・維持する事が必要がある。ワークステー ション等の発達により,小規模な計算は,計算機セン ターを必要としなくなったが,分野によっては,計算機の能力 が国際競争の鍵となっており,その重要性はますます増している。 電子計算機センターの今後の重要な役割の一つは, 真に大型計算を必要とする分野を選択しそこに特化したシステムを持つことであろう。大学では計算機センターの目 的を特定できないが,分子研では特定できる。分子科学の研究の飛躍的進展のためには計算機の能力が不可欠である ことをアピールし,予算増を目指すべきである。そのためには, 電子計算機センターを積極的に使う大型ユーザーを, 予算申請やシステム選定に積極的に参加させるべきであろう。

分子研電子計算機センターは来年度から岡崎国立共同研究機構・計算科学研究センターへと組織変えが行われる。従 来からの分子科学を大事にしながらも生物科学を包含した形での展開をする事になるが,それをどのように実現する かについては,十分な議論が行われるべきである。機構への組織変えに伴い,将来はなお一層の計算能力の拡大を目 指さなくてはならない。

また,予算の問題もあるが,分子研の施設は大学共同利用機関として全国の研究者に研究支援を行う必要があるに も関わらず,相変わらず支援スタッフ(助手や技官など)が不足しているという深刻な問題もある。予算や人員の不 足問題は,前回の評価でも指摘されているが,何も改善されていない。

(5)博士研究員に関する問題

分子研は,高度な研究を行う場として,また若手研究者を訓練する場として, 博士研究員を増員すべきである。また, 現在分子研に所属する博士研究員には,さまざまな待遇のものがあるが,ある程度待遇を統一した方がよい。また,外 国人の博士研究員をもっと容易に採用できる制度を導入するべきである。

(6)独立行政法人化に関する問題等

独立行政法人化に当っては,分子研は高等学術研究機関としての役割を果たすことを目指すべきであろう。そのた めには,予算の集中投資が必要である。基礎学術研究の重要性を訴え続け, 直ぐに役立つ研究にしかお金が出なくなる 様な状況の到来を絶対に避ける努力をしなくてはならない。 また,米国におけるように,研究指導者が研究費申請のた めの労力に研究時間の何割も費やさなくては ならないというような本末転倒な状況は是非とも避ける必要がある。

4-1-2 国内委員の意見書

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員A 分子科学研究所理論研究系は,設立以来,25年の間,日本の理論化学の研究の中心的役割を果たしてきた。現在の 日本における理論化学,化学物理理論の研究の進展も分子研理論研究系の存在を抜きには語れないと言っても過言で はない。数年前に分子基礎理論第4部門が作られ専任部門が3部門になったことにより研究分野が広がり,電子状態, 反応動力学,液体統計論,生体高分子など理論化学,化学物理の幅広い分野の研究者を擁する研究センターとして大 きく発展している。特に,歴史的理由により理論化学の分野に偏りが大きい日本の現状を考えると,理論研究系にお ける研究分野の配置のバランスの良さは極めて重要であり,今後の日本における理論化学,化学物理理論の研究に幅

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を持たせ大きく発展させるためにはこれまで以上に重要な役割を果たすことが期待される。分子研の恵まれた研究条 件の下で研究をすることは若い研究者にとって憧れであった。これまでも分子研での研究を通じて力量をつけ,大学 等の場で活躍している研究者を多く生み出してきた。ここ10年ほどの間の大学における理論化学の研究室数の増加や この間の大学院の量的拡大により理論化学,化学物理理論の研究者を目指す学生,特に博士課程大学院生の数が20数 年前に比べて大幅に増加している。これは理論化学の学問的発展にとっては好ましいことではあるが,一方で,いわ ゆるオーバードクター問題を再び生み出し,現状ではかなり深刻な事態となっている。このような現状を考えると,分 子研が博士課程修了者に研究の場を与えることは極めて重要であると思える。現在,IMSフェローを初めポスドクの 人たちが分子研で研究を行っているが,日本の大学から生み出される博士課程修了者の数を考えると,分子研のポス ドクの数はまだまだ少ないと言える。分子研における研究は,大学のように学生に対する教育の一環として進める研 究ではなく,professional な研究者が切磋琢磨して進める質の高い研究であるべきであり,そのために卓越した研究条 件が用意されていると言えよう。従って,特に理論研究系は,ポスドクを主力に研究を進めるべきであると言える。具 体的には,1研究グループ当たり2名の分子研独自のポスドクを持つ制度を早急に確立すべきである。これが保証さ れた上で学振その他のポスドクを受け入れる体制を作るべきである。

理論化学,化学物理理論の研究を進める上で電子計算機の利用は不可欠である。分子研計算機センターは,設立以 来,日本の理論化学の研究の発展に極めて大きな貢献をしてきた。日本が分子科学のための大きな計算機センター,計 算資源を持っていることは国際的にも有名であり,海外からの高い評価を受けてきた。分子研計算機は,日本の乏し い研究条件の下で理論化学の研究を進めるための一種の生活保障のような役割を果たし,それが今日の理論化学研究 の進展を支えてきたといえるが,科研費の増額などにより個々の研究室が不十分ながらワークステーションを所有す ることができるようになってきていることを考えるとその役割を変化させる必要があるように思える。当然,日本の 多くの理論化学研究者は,自分の所属する大学等に十分な計算資源を持っていないため,分子研計算機を日常の研究 のため使う必要があり,日本の理論化学のレベルを維持するためにはこの機能を引き続き持つ必要がある。しかし,現 状では,Gaussian などの汎用プログラムが多く使用され,多数のCPUやメモリーを要する大型計算が容易に実行でき る環境が十分に整備されていない。共同利用研の計算機は,大学などでは様々な制約のため実行することが困難な大 型計算を実行することができる環境を整え,研究の先端部分を前進させる役割を持っている。来年度には,分子研計 算機センターが岡崎研究機構のセンターになり,新しいスーパーコンが導入されることになっている。この機会に20 数年間続けてきた計算機利用申請の方法を再検討することも必要であろう。特別プロジェクトの申請を他の申請とは 別に募集するのも一案かもしれない。

最後に,現在,国立大学の独立行政法人化が大きな問題となっている。分子研も独立行政法人化の対象となってい ると聞いている。そもそも独立行政法人は,日本の財政問題に端を発し,行政改革の一環として大学,研究所を政府 から切り離し,効率化の論理で評価しようというものである。もし,現在言われている法人化が実行に移されたなら ば,分子研は大きな打撃を受けることは想像に難くない。特に,理論研究系の研究は,実用に直接結びつくものでは なく,産業その他に役立つことを基準に評価された場合,極めて困難な事態に陥らざるを得ない。また,効率化の論 理,費用対効果の論理で論文増産競争に巻き込まれた場合,質の高い研究によって理論化学,化学物理理論のセンター としての役割を果たすことが困難となり,ひいてはその存在価値も問われることになる。分子研理論研究系は,これ まで日本の理論化学の研究の進展に大きな寄与をしてきたが,それは実用の論理ではなく,純粋に学問の論理に則っ てである。この意味で,独立行政法人問題は,理論研究系にとって極めて深刻な問題であると言わざるを得ない。理 論研究系として,これまで果たしてきた役割,成果を踏まえ,独立行政法人問題に対して明確な意志表示をすべきで

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あると考える。

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員B 研究内容について

一般的な印象として,理論研究系の各部門のスタッフは,分子科学の最も重要と思われる領域に布陣しており,そ れぞれが専門的に掘り下げた一流の研究活動を行っている。新設の分子基礎理論第四部門は順調にスタートし,活発 な研究活動を軌道に乗せたように思われる。とりわけ電極・溶液界面などの溶液関連の研究や,有機導体関連の研究 はそれらの中核であり,従来カバーしきれなかった理論系研究科としての新しい領域を開拓している。分子基礎理論 第一研究部門では量子化学の中軸となる研究が進み,励起状態やクラスターなどで大きな成果があがっているが,た んぱく質分子の第一原理計算からの立体構造予測など,生物との関わりのある研究も大いに注目される。分子基礎理 論第二研究部門でのトンネル遷移過程の解析的な理論はユニークな研究であるが,溶液の非線形高次光学過程,溶液 内電子移動の研究も分野的には重要な方向を目指すものと言えよう。

一方,これからまさに大きく発展しようとする分子科学の課題は多く,その前線は極めて大きな広がりを示してい る。例をあげれば個々の分子を機能回路素子として用いる単分子エレクトロニクス,原子間力顕微鏡で開かれる原子 分子ナノ力学,カーボンナノチューブと表面のハイブリッド系,有機分子と無機固体複合系など,将来の超微細デバ イス,機能性ナノ材料と関係する分野がある。このような躍動的に進展している周辺分野の動きにも,理論の立場か らの目配りが欲しい。物性物理や電子工学などの分野とのより太いパイプができることを,さらに期待したいところ である。電子計算機センターの関連では,新しい計算理論やコンピュータアーキテクチャなど関連分野についても,関 心を持っていただき,交流の機会を作るよう努力されるといいのではないかと思った。

一般論として,先端的な科学研究者には専門分野で超一流の研究をすることを絶えず求められているのはもちろん だが,分子研の研究者にはそれ以上のことを期待するのは間違いだろうか? すなわち,研究の成果とその意義,あ るいは面白さを,同業者はもちろんのこと,他の科学一般の領域にいる人々,さらにはアカデミックな世界とは無縁 な一般社会にどのようなかたちにせよ有形無形に絶えず発信してゆくようなスタンスを持ってほしいと思う。すなわ ち基礎科学がなぜ社会にとって必要なのかという,一般国民,特に行政やメディアにたいする説得性(アカウンタビ リテイ)が必要とされる。これは科学や文化に対する基本的な無理解にねざす安易な独立法人化などが喧伝される現 在,とくに重要なことと思われる。残念ながら我が国では一般の国民を始め,政財官界,マスコミなどの多くは,科 学に対する共感や理解は乏しく,技術と科学の違いすらよく認識していないように思われる。たとえば先端技術の基 礎として応用研究に徹する工学的研究ならば経済的基礎も得やすく,政府,国民にたいして十分な説得力を持ちうる であろう。しかし,分子研の使命は必ずしも応用を指向する訳では無く,自然科学的な真理の探求あるいは純粋な学 問的な好奇心に触発される基礎科学としての展開に重点があると思われる。そうであればこそ,上に述べたアカウン タビリテイと情報発信の努力が求められるのではなかろうか? 上に述べたことを実現するためにも,関連分野はも ちろんのこと,科学技術 の最先端の動向にいつも関心を持ちつづけ,場合によっては新しいパラダイムを創生するほ どの気構えが,必然的に求められることとなるであろう。一つの専門分野でリーダシップをとりつづけることは,お そらくどのような一流の研究にとっても必要条件であるに違いない。しかし,そればかりではなく発想やアプローチ を固定化することなく,生き生きと躍動する異分野を横断的に眺められるスケールの大きさと大胆な発想が重要にな る。これは研究者一般に望まれることであるが,とりわけ分子研の研究者にはそのようなことを期待したいところで ある。ことばを変えれば専門性に埋没するのではなく,非専門性の中から養分をとりこむ努力を怠らないことである。

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ことなる環境にいる研究者との感受性の豊かな出会いが必要なのである。学問の細分化が極限にまで進みつつある現 在,異分野間の交流,情報発信の意欲の重要性はますます高まりつつある。分子研の研究者,とくに理論研究者の方々 には,是非こうした意識を持ち続けていただくことをお願いしたい。

大学院教育について

研究にたいするしっかりした動機をもった学生については,分子研で大学院教育行うことによって,いろいろな面 で良い効果が期待される。学生自身が優れた研究者からの影響をうけ,第一線を切り開く一流の研究に身をもって参 加し,一つの達成を体験することの教育効果は計り知れない。そればかりでなく研究者自身にとっても,学生の生き 生きと発想にふれること,自らも教育者として初心回帰を迫られることなど,いろいろと望ましい効果があると思わ れる。

一方,十分な動機と能力のない学生を分子研に受け入れること,あるいはそうならざるを得ない教育システムにコ ミットすることには,賛成できかねる。このような学生の指導をするには,膨大な労力と時間を割かなければならな いからである。もちろん,このように全精力をもって動機付けから出発する初心者教育をおこなうこと自体は有意義 なことである。しかし,これに最先端の研究を行う研究所スタッフが取り組むのは,経済的,人的資源の効率的運用 の観点からしても,決して望ましいことではないと思われる。

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員C 年の暮れのおしせまった12月25日に分子研に寄らせていただき,中村先生をはじめ理論系の研究者の方々と,情報 交換・議論をさせていただきました。その折私が発言しましたことを中心に,ここで一筆述べさせていただきます。 (1)分子科学関連分野での理論の発展 

電子状態理論は過去20年余の間に驚異的な発展をとげ,各種分光法によって得られるスペクトルの解析はもとより, 多様な化学反応について反応経路の詳細を明らかにすることのできるような理論的手法が発展してきた。

一方,分子集団や蛋白質などの巨大分子を対象とする統計力学的な研究についても,D e Gennes のスケーリング理論 に代表されるように,大きな進展があった。さらに,非平衡系の統計力学の主たる研究対象が,国際的に見て線形領 域から非線形領域へとシフトしたのも,ここ20年余の間の特徴であると思われる。

(2)日本における現状と国際的位置付け

分子軌道理論に代表される量子化学の研究者は,分子研創設以降着実に増加しており,国際的に見て,トップクラ スの研究が進められてきている。一方で,日本国内の大学では依然,化学と物理の間の溝は深く,分子科学の理論的 発展を担いうる人材の養成には大きな問題が残されている。

(3)分子研の役割と評価

分子研はこの間,分子の電子状態や反応論の研究の発展に中核的な役割を果たしてきたと言って良いと思われる。過 去,理論系の人員は決して多いとは言える状況にはなかったが,国際的に見ても,極めてレベルの高い研究が進めら れていた。

又,少ないスタッフのもと計算センターが Open な形で運営され,それを活用する中で国内外の研究者が,有意義な 研究を進めてきたといえる。

分子科学領域の理論計算は,大規模なものとなることが多い。又,そのような高負荷の計算によってはじめて分子 や分子集団の挙動をより正しく,記述することが可能となる。それ故,共同利用研究所としての有効に機能するため にも,計算機環境を持続的に整備していくことが重要な課題である。

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(4)今後の発展が期待されている研究課題

分子の理論計算は依然,極めてホットな研究課題であり,今後も大きな発展が期待される。そのためにも計算機環 境の整備が必須であることは既に述べた。そこでここでは別の側面から私見を言わせていただきたいと思う。

過去20余年の間に,化学物理(物性)理論は,質的な発展をとげた。繰り込み群やスクーリング理論,カオスなど の非線形現象,ランダウ流の相転移理論等,それまでの時代とは一線を画するような新しい概念や理論が生み出され てきている。非平衡系の統計力学の理論的対象自体,線形から非線形に大きく拡張した。このような理論的発展を踏 まえて,いまや北米や欧米を主体に30を超える Nonlinear をその名称の中に持つ研究所や機関が創設されてきている。 そしてこういった研究所では数理物理的方法論を核にして,化学,生物さらにはもっと広い分野を対象とした研究が 進められている。残念ながら日本ではこのような学際的な研究所はまだ無い。私の個人意見としては,日本でこのよ うな研究所を作ると,すぐにそれ自体が変質して新たな“ 村社会” となる危険性が大きいと思われる。そこで,分子 研の理論部門を,今後一段と拡充することにより,このような非線形ダイナミクスを中心に捉えた研究も行えるよう にしていただければと思う。特に岡崎研究機構に設置予定の総合バイオセンターは,分子研と基生研・生理研の3研 究所が協力してできるものとお伺いしている。分子研はかつて“ バイオ系の研究はしない” ものと思われていた頃と 比べると,隔世の感があるが,この新しい方向性は歓迎すべきものと思われる。

生命現象の核心に迫ろうとするなら個々の分子の物性研究だけでは限界がある。生命は,極めて多数の分子が巾広 い時間スケールにわたって関わっている非平衡の現象である。そこでは近年発展してきた化学物理の理論が大いに役 立つものと期待される。

分子研への期待

物理と化学を融合した新しい化学物理研究を切り開いていただくことを期待している。又,日本の大学や学会の 持つ“ 村社会” の悪弊を打ち破るような,研究活動をしていただければと思っている。

特に重要なのは,欧米の流行を追いかける競争的研究ではなく,学問的に意味のある創造的研究を推進していくこ とであろう。

(5)分子研に対する諸々の意見

①博士研究員

各大学で博士課程を終了した若手研究員が武者修行できるように,十分な数の博士研究員のポストを確保すること を努めて頂きたい。特にIMSフェロー(非常勤講師)の一層の充実が望まれる。

②大学院生教育

優秀な大学院生が入学してくるよう努力することが求められていると思います。少なくとも国立大学の修士修了者 が分子研の博士課程に進学する時には,入学金は免除されるべきものと考える。又,各々の国立大学においても学生 を抱え込むのではなく,流動化するような方策をとる必要があるであろう。

今後,総研大として,修士の学生も採るようになるのであれば,分子研の若手・中堅の研究者にとって教育上の負 担が大きくなりすぎないような配慮が望まれる。

③独立行政法人化

分子科学研究所は過去20年余,一貫して基礎的な学問を推進し,学界に貢献してきた。その成果は新材料や医薬品 開発などの広範囲な応用部門に,必ずしも目に見えない形で役立ってきている。換言すると“ 目的志向” の研究所で ないが故に,その社会への寄与はむしろ極めて大きなものとなっている。議論が進められている独立行政法人化は,安 易な形で実行されるなら基礎研究所の使途をつぶすものになりかねないと思われる。基礎研究を推進する場としての,

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分子科学研究所の役割が社会に認知されるよう,より一層の努力をお願いしたい。

4-1-3 国外委員の評価

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 原文 19 January, 2000

D ear Professor K aya

I now send you my report and recommendations following the presentations of the Professors of the Department of Theoretical Studies. I saw three Full Professors (Iwata, Nakamura, Hirata) and three Associate Professors (Okamoto, Tanimura, Yonemitsu) as well as Professor Aoyagi from the computer centre.

I was impressed with the originality of the research presented, and the enthusiasm of the scientists in their research. Much of the research commands international attention and is certainly at the forefront of modern research in these areas. The breadth of research is considerable: quantum chemistry, protein folding dynamics, molecular reaction dynamics, condensed phase non-linear optical spectroscopy, molecules in solution, one- and two-dimensional organic conductors, spectroscopy and dynamics of 3- and 4- atom molecules. Taken all together the research is of the highest quality.

It is my view that the size of the Department of Theoretical Studies is appropriate. Of course today theory plays a role in all branches of physics and chemistry and there are innumerable areas in which a theoretician can make a contribution. Increasingly experimental groups will carry out their own theoretical studies. My only advice regarding new directions is that when an Associate Professor departs for elsewhere, it should not follow that his successor is in the same field.

There is good collaboration with other departments at IMS and other universities in Japan.

The situation of theoretical chemistry in particular in Japan is rapidly improving. I know of large research groups in Tokyo, Kyoto and elsewhere; this means that IMS must work hard to maintain its reputation for excellence if its function is to be justified. A critical decision must soon be made because Suehiro Iwata retires shortly. Quantum chemistry (following its Nobel Prize in 1998) is now recognised as a permanent mature branch of theoretical chemistry. Every leading theoretical chemistry department must have a quantum chemist. IMS must have a quantum chemist! I furthermore observe that many universities are appointing young people as their quantum chemists. Quantum chemistry now covers a broad range from state-of-the-art studies of small molecules through the use of density functional theory for larger molecules, leading to a combination of quantum mechanics and classical mechanics for the largest systems.

I was particularly impressed that the associate professors were pleased with, the scientific environment within which they work, their equipment and the library facilities. I was also pleased that they were able to attend important international conferences in their fields; this is vital for the development of their research.

I was pleased to hear that the scientists at IMS recognise the importance of holding scientific meetings at their conference centre; such meetings and participations are becoming almost as important as writing scientific papers. They automatically lead to international collaborations.

The area of concern which was drawn to my attention: in a modern research environment (consisting of full professors and associate professors) the role of the post-doctoral scientist is important; he/she will already have research experience and will contribute strongly to research and will bring in new ideas. Permanent staff members wish have funds available to appoint postdoctorals to work on specific projects; such applications should be dealt with promptly by the grant issuing authorities, and it is usual for the

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postdoctoral positions to be advertised once they are awarded. It is recommended that the procedures for postdoctoral appointments is re-examined.

I heard about the new machines which are expected at the computer centre. Their prospective performance will be of great benefit of the Department of Theoretical Studies.

In summary, it was a pleasure for me to hear about the exciting research being carried at the Department of Theoretical Studies at IMS. The Department's size and activities mean that it is well placed to contribute to 21st century science.

Yours Sincerely Nicholas Handy

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 訳文 茅所長殿:

理論研究系のグループリーダーの方々による研究紹介を伺い私の報告と助言を申し上げます。三名の教授(岩田,中 村,平田)と三名の助教授(岡本,谷村,米満),及び計算センターの青柳助教授にお会いしました。

皆さんの研究のオリジナリティと熱意には感銘を受けました。研究の多くは国際的な注目を受けており,各々の分 野の研究の最前線に間違いなく位置付けられます。研究の広がりは実に顕著であり,次の様な様々な分野にまたがっ ています:量子化学,タンパク質フォールディング,分子の反応動力学,凝縮系の非線形光学分光,溶液中の分子,1, 2次元の有機導体,3及び4原子分子の動力学。これら全ての研究は最高水準のものであります。

理論研究系の大きさは,私の見る所,適当なものと思われます。勿論今日では,理論は物理と化学の全ての分野に 渡って重要な役割を果たしており,理論家が貢献出来る分野は数え切れない程あります。実験家は益々彼等自身で自 分達の理論的解析を行う様になるでしょうが。今後の新しい方向に対する助言として言える事は,将来助教授が他に 転出した時その後継者を同じ分野で選ぶ必要はないであろうと言う事だけです。

分子研の他の研究系及び日本の他の大学との共同研究も活発に行われています。日本に於ける理論化学の状況は最 近富に改善されています。東京や京都,その他の場所に大きな研究グループが形成されています。従って,分子研は その役割を正当化する為に研究における高い評価を維持する様に十分な努力をする必要があるでしょう。岩田末広教 授が間もなく退官されるので,近い将来重要な決定がなされなくてはならないでしょう。量子化学は1998年のノーベ ル賞を受けて今や理論化学の成熟した恒久的分野として認知されるに至っています。全ての拠点的な理論化学部門に は必ず量子化学者が必要です。分子研にも量子化学者が絶対に必要です。多くの大学が若い量子化学者を採用してい るのが見てとれます。量子化学は今や小さい分子の詳細な研究から大きな分子の密度汎関数による取り扱いまでに及 び,量子力学と古典力学を結合して大きな系への挑戦を始めています。

助教授の人達が分子研における研究環境,設備,図書等の完備に満足しているのには大変感銘を受けました。また 彼等が各々の分野で重要な国際会議に出席出来る様になっているのもまた喜ばしい事です。これは彼等の研究の発展 にとって極めて大事なことです。

分子研の研究者達が岡崎コンファレンスセンターに於いて種々の研究会を開催することが重要な事であると考えて おられるのを聞いて嬉しく思いました。そういう研究会議に参加する事は論文を書くのと同じ位重要なことです。そ

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れは国際的な協力研究へと自動的に発展しうるからです。

私が気になった事の一つは,現代の研究環境に於いては(教授にとってであれ助教授にとってであれ)博士研究員 の役割が大変重要であるという事です。彼等は研究経験があるが故に研究に大いに貢献してくれますし新しいアイディ アを持ち込んでくれます。教授・助教授の人達は個々の研究課題に参画してくれる博士研究員を採用できる資金が出 来る事を望んでいます。その為の申請は資金供給の当局によって速やかに処理される事が望ましいと思います。博士 研究員を採用出来る事が分かったらそれを速やかに公にし優れた人を採用出来るようにすべきです。博士研究員採用 の手続きを見直す必要があるでしょう。

電子計算機センターに設置される新しい計算機の事を伺いましたが,その能力は理論研究系にとって大きな力とな るでしょう。

最後に,分子研の理論研究系において行われている高度な研究活動のお話しを聞く事が出来大変嬉しく思います。 系の大きさとそこにおける研究活動は正に21世紀の科学に大いに貢献して行けるものであります。

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4-2 分子構造研究系

国内評価委員会開催日:平成11年11月8日

委 員 田隅 三生 (埼玉大理,教授・理学部長) 志田 忠正 (京大院理,名誉教授) 藪崎  努 (京大院理,教授) 北川 禎三 (分子研,教授) オブザーバ 森田 紀夫 (分子研,助教授)

加藤 立久 (分子研,助教授) 国外評価委員面接日:平成11年12月13日∼14日

委 員 Professor Wolfgang Kiefer (University of Würtzburg)

4-2-1 点検評価国内委員会の報告

分子構造系の将来・展望

所内委員D:分子構造研究系の現状を説明します。第一部門の齋藤教授が3月で退官され,後任人事を行いました。し かし人事部会が決定した候補者を招聘することに失敗しました。現在このポジションは空き枠になって います。研究所全体の現状としては,三研究所合同の研究センターが発足し,基生研所属のセンターと なっています。この研究センターの発展としての統合バイオサイエンスセンターを概算要求中です。 まず,系の再編成ということを含めて分子構造系の将来を議論していただけないでしょうか。

所外委員B:分子構造系の今後や,分子研の将来に対する意見は,3年前に述べた内容と何ら変わりがないと思いま す。歴史的には高分解能分光がこの研究系のキーワードになってきたのだから,高分解能分光の現状評 価と将来展望を行ってみては如何ですか?

所内委員D:それではこの研究系の分野として高分解能分光を今後も生かして行くべきか否かを議論してください。 所外委員C:最近は世界的に高分解能分光を基礎とし,原子や分子を制御する研究など,新しいものへの応用として

広がりつつある。それは化学と物理の接点として重要である。

所外委員A:コロンバスミーティングなどの出席者を例にとって,高分解能分光の人口は増加しているのでしょうか? 所外委員C:物理の分野では人口は増えていない,他分野への広がりと変化している。

所外委員B:高分解能分光の人口は増減していないでしょう。しかし,米国内では高分解能分光の分野として悲観論 はない。落ち着いた安定した学問であって,安定感がみられる。その上で岡先生や天野先生のような天 文学への進出が盛んである。つまり,基礎がしっかりしているがゆえに,変幻自在に変化・発展してい る。その点日本の学会では,他への応用など他分野への進出がうまくいっていない気がします。 所外委員A:人口は増加していないにしても,内容が大きく変わってきているのではないですか? クラスターや天

文学の問題へと。

所外委員B:高分解能分光としての方法論はほぼ完成して進歩は止まって,今後新しい応用への展開を模索していく ことが必要でしょう。

所内委員D:「分子構造研究系」という名前を捨てるような改組も頭に入れた,系の再編成についてはどう考えられま すか?

所外委員B:基礎分子科学として何が重要なのかという観点から,高分解能分光(分子構造)が必要かを徹底的に議

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論すべきで,名前の問題は二の次のような気がします。

化学者として分子間相互作用を正しく人々に知らしめることが仕事と考えます。たとえば水中のタンパ ク質の問題でも,生物学者や薬学者に対して化学者はそこに働く分子間相互作用の正しい姿を教えてい るのでしょうか? 物理化学者のやり方が荒っぽく,解ることだけを解るように説明してきたし,例え ば分子軌道法などでは状態のエネルギーですべてを片づけてきた。そこに安住しすぎた感がある。 所外委員C:確かに,日本の化学者はよく解らないことに興味を示さないようです。例えば,液体 He 中の分光を行う

と,よく解らない分子間相互作用や反応がいっぱい見つかるのですが,化学者は興味を示さない。 所外委員B:化学者は保守的です。各論的で,安定感のあるところに満足している。

所外委員A:創立当初の分子研の旗頭は「極限に挑む」でした。最近この旗頭がボケてきていると思います。 所外委員C:分子研は保守的であってはならない,チャレンジングであるべきです。

所外委員B:創立当時はもっとチャレンジングでした。若い人に機会を与えるべきです。

所外委員C:若い人たちが必ずしも,保守的ではなくチャレンジングかというと疑問ですね。今はお金で買える装置 を使って研究をして,本当のオリジナリティーが欠けている。また,新しい物を作らなくなった。他の 人の良い仕事をフォローしたがる傾向がある。

所外委員B:オリジナリティーの定義をそこまで厳格にする必要はないと思いますが,若い人が新しい物を作らなく なったことは問題です。それに数学的訓練が大きく不足している。

所外委員A:それは大学にこそ当てはまると思います。 大学との区別

所内委員D:それでは分子研と大学との住み分けについて議論願いますか?

所外委員A:国立大学・研究所の特殊法人化が現実味を帯びてきている今,分子研は大学との差をはっきり打ち出す べきです。

所外委員C:法人化は,基礎学問派は反対で,実学問派は賛成ですね。

所内委員D:分子研も基本的には法人化に反対してます。大学の理学部と同じ立場です。プロジェクト志向型の研究 は法人化に適しているが,基礎研究にとって年次計画で結果を求められても困ります。現在,分子研と しては国立の高等研究所構想を考えています。

所外委員B:法人化に反対して,例外的存在が可能であるならば高等研究所構想はおもしろいですね。しかしそのた めには,建物,人材などそれなりの『器』が必要ではないですか?

所外委員A:それに高等研究所であるためには,外からのサポートが必要でしょう。

所外委員B:外の大学からのサポートが難しければ,ヨーロッパとの連合高等研究所構想などはできないでしょうか ね?

所内委員D:21世紀の構想のなかで,税金を使っていることへのアカウンタビリティーが必要な気がしますが,どう 考えられますか?

所外委員B:納税者(一般大衆)へのアカウンタビリティーは必要ないでしょう。

所内委員D:しかし,天文学などは一般大衆へのうまいアピールで多額の研究費を獲得しています。

所外委員B:ライフサイエンスの領域を,分子研レベルの分子科学まで引き上げるような努力をすれば良いのではな いですか?

所外委員A:生物学・生理学の問題を分子科学として分子研が取り上げるという考えは20年前なら良かったが,今か

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らでは手遅れですよ。現在の遺伝子操作・発生分化操作技術は,分子科学基礎レベルで説明できるよう なものから遙かに先を走っています。生物の上流だったはずの物理学・化学が,今は下流になりつつあ る。

所内委員D:環境科学に対する分子科学の貢献が可能ではないでしょうか? 所外委員A:大変どろくさい研究になって,研究所全体でやれますか?

所外委員B:それに,環境科学の研究所はすでに2つありますので,ずっと後発になります。

所外委員A:そう考えていくと,物質科学の分野に展開していくのがオーソドックスな展開方向ですね。系の改組を 考える考える前に,研究系を越えた共同研究プロジェクトを進めては如何ですか?

所外委員B:確かに系を越えた共同研究による,変幻自在なアメーバー的プロジェクト研究を推し進めるのは良いで すね。研究テーマによって協力する系の組み合わせが自在に変わっていくようなプロジェクトです。 所外委員A:これまで,本気でこのような系を越えた共同研究プロジェクトを考えた人がいなかったのではありませ

んか? 系を越えた共同研究プロジェクトを強くひぱっていく人が必要です。 人事問題

所内委員D:教授人事で教授にきてくれる人が少ないという問題はどうお考えですか?

所外委員C:教授候補者が分子研へきたがらないのは,もうすでに研究や研究体制がかなり確立したシニアな人を選 んでいるからではないのですか?

所外委員A:分子研の教授人事選考の方法が硬直化しています。固すぎます,柔軟性に欠けていると思います。もっ と柔軟・敏速に人事選考すべきです。最初から書類審査に始まり,候補者全員の論文査読,等々すべて の手続きを固くとっていく。これでは良い人を柔軟・敏速に採ることができませんし,時間の無駄です。 所外委員B:バイオセンターの件にしても,高等研究所構想にしても,それを推し進める上で「器」だけは確保して

ほしいですね。欧米の一流の研究施設をみるときに,分子研は研究所としてのインフラストラクチャー を堅持すべきです。

所外委員A:その通りです。経費削減のために研究者が草抜きをするなんてことはやめるべきですよ。

4-2-2 国内委員の意見書

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員A 評価委員会でとくに話題になったことが二つあったと思う。第一は,齋藤修二氏が定年で退職された後の人事に関 係して,高分解分光分野を分子研で今後どう取り扱ったらよいかという点であった。分子研発足以来,廣田榮治,齋 藤修二の2代の教授が多くの輝かしい研究業績をあげ,分子研の名声を高からしめたことは衆目の一致するところで あろう。そもそも高分解分子分光は分子科学の基幹的手法であり対象であるから,この分野で今後有望と目される人 材がいるのなら,やはりこの分野は分子研として保持してほしいと私は思っている。しかし,どうしても適当な人材 が得られないのならば,他の分野の有望研究者を当てることも止むを得ないであろう。

もう一つの話題は,生体分子関係の分野を分子研で拡大すべきかどうかというものであった。私はこの問題につい て mixed feeling を持っている。私自身も生体分子の研究を行ってきたつもりなので(現時点ではほとんど行っていな いが), そのような視点から見て,分子研がこの分野を重視するのが遅かったと常々思ってきた。もちろん,分子研で は北川教授がラマン分光によるヘム蛋白の研究で世界的な業績をあげてこられたが,分子研の相当大きな部分がこれ からこの分野に参入するとなると,生物科学にどういう切り口で挑戦するのかよほど考えなければならない。生物科

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学の過去20年間の進歩は恐ろしいほどのものがあり,分子科学に一番近い構造生物学も活気溢れる分野に成長してい る。分子生物学と薬学,医学との距離が縮小し,分子生物学自体も急速に変質しつつあるように見える。このような 状況下で,分子科学が本当に意味のある貢献ができるだろうか。個々の研究者がばらばらに自分が興味を持っている ことを研究するだけでは,大きなインパクトは期待できない。ユニークな研究課題について組織的な研究を展開する ことができなければ,出遅れを取り戻すことは不可能であろう。よほどの覚悟がなければ出来ないことだと思う。

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員B 分子構造研究系は気相での短寿命分子の高分解能分子分光と生体系の時間分光を中心としてこれまで先駆的な業績 をあげてきた。この研究系の分野は分子研の研究の中でも最も基礎的な実験研究を指向したものであり,分子研が今 後,どのように進展するかによらず,このような「基礎の基礎」をコアとして確保することは重要である。高分解能 分子分光の実験手法は完成度が高いように見えるので将来的にはなばなしい発展が期待できないという見方もあるが, 信頼性の高い分光データは今後とも分子科学の進歩を支えるものである。最近の星間分子に関する分光情報は狭い意 味の化学の領域を抜け出て宇宙科学に大きな貢献をした。このような形が堅実な分子科学のあるべき姿の好例といえ る。生体系や少数多体系での分子間相互作用の定量的な情報を含んだ分光データを得ることも,慶昧な推論に基づい た議論より重要な作業である。生体系などに見られる微妙な分子間相互作用の解明にも結局,分子分光学的な研究が 最も基礎になるものと考える。

これまでの構造研究系が辿ってきた道は大筋で正しいものであり,種々の外圧によって改変が迫られているように 見える現在こそ,分子研が四半世紀をかけて築いてきた研究の路線に自信をもってよいと考える。しかし,勿論,現 状維持にとどまることは許されない。そこで,仮にエージェンシー化が進み,運営の自由度が増すものとして,これ を機に思い切った若手リーダーの登用を進めることが望まれる。また,快適な生活空間を含むインフラストラクチュ アーの整備に力を入れ,これによって欧米諸国から見ても真に魅力的な研究機関に発展すること,さらに,アジア地 域の研究者との実質的で長続きのする研究交流を推進することが期待される。

共同利用研のあり方:

分子研の本来の目的の一つは,大学だけでは果たせない研究交流,人事の流動を促進することにあった。しかし,国 立大学のエージェンシー化の流れが始まり,大学の事情が流動的な方向へ向いそうな現在,共同利用研としての分子 研のあり方については率直に云って十分な見通しをもつことができない。ヨーロッパの各国とくにヨーロッパ連合に 加盟の国々はいろいろな形での提携や共同作業を模索しつつあるように見える。この際はその動きをよく把握して参 考になり得るものは取り入れる努力をしてみるのもよいのではないか。

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 委員C (1)当該研究系の研究分野での分子研の役割,寄与と位置付け

当該研究分野での研究はレーザーを駆使した分光と関連する基礎科学(基礎化学,物理)が中心となっている。そ の面で,短期間の特定のテーマの研究が主流である分子研内の他の研究系とは異なり,長期的な視野を持った基礎的 な研究を行うという使命を持っている。このような基礎科学の研究は,将来の分子科学に重要な寄与と位置付けを持っ ている。現在のこの研究系は少数のメンバーであるにもかかわらず,世界の最先端を行く研究がなされていると思わ れる。

(2)この分野の国内国外での研究分野としての重要度

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この分野は国内,国外を通して現在最も重要な研究分野の1つである。例えば,当該研究系で推進している反陽子 ヘリウムの研究は独創的で,我が国が誇る研究の1つである。またレーザー冷却を駆使した研究は分子科学において ますます重要になってくることが予想されるが,当該研究系で推進しているヘリウム原子のレーザー冷却の研究は日 本で唯一のものであり,特に励起状態の冷却原子の衝突に関する立派な成果をあげている。

(3)今後この分野の発展はあるか,どのような方向か

この分野の発展は従来以上に非常に期待できると思われる。特に原子や分子の運動を光や特異な環境のもとで制御 することで,より高分解能に物質の状態を知ることができる。さらに,このような制御は新しい分子の生成(たとえ ば分子研の当該分野で行われている反陽子ヘリウムのようなエキゾティック原子分子の研究)などの新しい研究が期 待できる。また,レーザー冷却などの新しい技術を用いた超低温下での分子分光,化学反応は分子科学の基盤となる 今まで得られ難かった重要な知見をもたらすことが期待される。

(4)分子研の当該研究系が今後,どのように進むべきか

上述したように当該研究系は分子研の中で,レーザー分光を基盤とした長期的な基礎研究を行うといった特異的な 存在で,分子を化学の観点から研究する他の多くの研究者の中で,唯一物理学的な視野に立った研究が行われている。 分子研全体のバランスから,この分野の研究者がもう少し多くなることを望みたい。

将来構想

(5)分子研の共同利用機関としての現状と,将来への提言

分子科学における各種データをより充実し,これらの中心地となり,外部から用意にアクセスできるようにしてい ただきたい。また,上述のように,現在化学が中心となっている分子研の分野の枠を多少広げ,物理学,生物学の分 野の分子科学者の増強を望みたい。

(6)分子研に対する建設的批判,提言

良い研究所は若い研究者にとって魅力のある研究所である。優秀な若い人材を集めるには人事公募に内部からの研 究者も応募できるようにしてはどうか。

4-2-3 国外委員の評価

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 原文 Report for Prof. Kato

The main scientific activities of Professor Kato are twofold:

(i) Site selective spectroscopy in the solid state applying Raman Heterodetection of Magnetic Resonance:

This elegant technique was already invented by Professor Brewer in 1983 at IBM in San Jose and has been exclusively applied to rare earth impurity ions in inorganic crystals until Professor Kato’s work. The method combines radio frequency with optical frequencies in order to produce coherent states in atomic ions and by detecting the beating between the laser frequency and the anti- Stokes Raman signal produced in the system one is able to derive high resolution splittings in the Mhz range. While Brewer’s group investigated the hyperfine splittings of the Pr3+ ion, Professor Kato extended this work to study the La3+ ion in two ways. First he tried to derive the splittings of the 3Po levels which are of the order of about 1 Mhz. Since the jitter of his laser is of the order of 1.5 to 2 Mhz he could not succeed for this study. However, most interestingly, he was able to find new signals in the range between 2 and 5 Mhz which he could interpretate to the contribution of different sites of the La ion relative to the Pr ion by calculating the magnetic dipole interactions.

(16)

A real breakthrough, however, was certainly the application of this technique to molecular crystals. By converting the technique in going from the ground state to the electonic state by the optical step and then using the radio frequency he could study high resolution splittings in the excited state in a molecular crystal and could measure for the first time the triplet exciton in 1,4- dibromonaphthalene using this technique. This lead to an excellent publication in Phys. Rev. Lett.

(ii) Study of the molecular and electronic structure of radical ions of fullerenes and metallofullerenes by EPR and ENDOR measurements:

Particularly the investigations of metals inside the carbon cage and the chemical properties of such systems as a whole and as related to their chemical reactivity are of great general importance. By high field pulsed ESR he could study the metallofullerenes Sc@C82, Y@C82, and La@C82. Of special interest are also his studies by varying the size of the cage (C76 to C90) and the work on La in the two isomers of C82. Pulsed ENDOR measurements on these systems round up these investigations.

Further studies performed in Professor Katos’ group are:

(iii) Double resonance spectroscopy using two phase-locked lasers:

The technique has already been set up and there will very interesting experiments being done related to dephasing processes in excited molecules or phase controlled reaction dynamics in the future.

(iv) State correlated Raman spectroscopy for the elucidation of phase transitions:

Professor Kato has started with investigations of the orientational ordering in the ferro- and antiferroelectric liquid crystal molecule MHPOBC.

Both approaches (iii and iv) are of high scientific interest.

Report for Prof. Morita

The scientific work of Professor Morita and his group is related to fundamental physical problems mainly in the field of (i) laser cooling and trapping of neutral atoms, (ii) spectroscopy of atoms and ions in liquid helium, and (iii) laser investigations of an antiproton-helium compound, which he calls “atomcule.” Their results have been published mostly in the leading physics journals Phys. Rev. and Phys. Rev. Lett.

To (i):

The main experimental achievement clearly is the construction of a magneto-optical trap (MOT) for metastable helium-3-atoms. While there has been several demonstrations of laser trapping of the bosonic isotope 4He, laser trapping of the fermionic isotope 3He has never been demonstrated before. By confining 3He and 4He in their respective MOTs, the Morita group was able to measure the ionization rate coefficients for Penning collisions between two cold He atoms and could therefore study the difference in cold collision dynamics. The interpretation of the isotopic difference is not trivial but could be interpreted by considering the various ionizing channels and the degree of degeneracy which is different for 4He* + 4He* and 3He* + 3He*. Fairly good agreement between the experimental values of the ionization rates for He (2s 3S1) + He (2s 3S1) collisions could be obtained whereas the agreement is not so good for He* + He* collisions in the presence of laser light. This outstanding work could be published in Phys. Rev. Lett. There is a great challenge to use particularly the 3He trap to perform Bose-Einstein condensation of fermionic atoms. Most impressive is the experimental set-up which contains a home-made single-mode cw ring LNA laser.

To (ii):

They have measured some excitation and emission spectra of Mg and Ca in liquid 3He in order to observe interesting phenomena

(17)

which arise from quantum features differing between liquid 3He and 4He. In this context they have presented a new model of exciplex formation between Mg and He and found that this model is more suitable for understanding the dynamics in the studied transition than the bubble model used earlier.

Also very interesting results were obtained from the Yb+ ions in liquid helium which were produced by laser sputtering. A double resonance excitation from the 2S1/2 into the 2P1/2 and 2P3/2 states showed sharp emission only from the 2P1/2 state because of fast relaxation from the 2P3/2 to the 2P1/2 state. The frequency shift as well as the the linewidth in the observed double line structure for the D2 excitation spectrum could be explained by a theory envolving a vibrating bubble model.

To (iii):

Most of the papers published during 1996 until 1998 of Professor Morita’s group were on laser investigations of antiproton helium compound, an unusual species which is the first long-lived exotic atom containing hadrons other than normal protons and neutrons. On this new compound (“atomcule”) laser spectroscopic investigations were performed in order to study its properties and dynamics. Of particular interest is their report on the first observation of laser-induced resonant annihilation. This work has been performed at CERN together with nuclear physicists.

Report for Prof. Kitagawa

The scientific achievements of Professor Teizo Kitagawa and his group in the field of biomolecular science are outstanding. The research activities of this group cover a very widespread area ranging from the development of special Raman techniques including picosecond time resolved resonance Raman (TR3) spectroscopy and the construction of coherent light sources required for their particular research, up to a great many of very thorough studies of problems in biochemical science. It would be too much to summarize comprehensively all the work done by this group during the period from 1996 to 1999. In the following only a few selected investigations which were performed in Prof. Kitagawa’s laboratories and which are regarded to have the highest scientific impact will be summarized:

(i) In a very exciting contribution to „Science“ he reports on the direct observation of cooling of heme upon photodissociation of carbonmonoxy myoglobin. The formation of vibrationally excited heme and its subsequent vibrational energy relaxation has been monitored by applying picosecond anti-Stokes Raman spectroscopy yielding a vibrational relaxation time constant of 1.9 ps for the CO-photodissociated heme. This most important study allowed the direct observation of the vibrational energy flow through the protein moiety and to the water bath.

(ii) Another most important work, which has been published very recently in J. Chem. Phys., is related to the intramolecular vibrational redistribution (IVR) and intermolecular energy transfer (IET) in the (d,d) excited state of nickel octaethylporphyrin (NiOEP). While comparable work has been performed before for small molecules, this is the first detailed quantitative study of the time evolution of the two processes (IVR, IET) for large molecules in solution. By successfully applying picosecond TR3- spectroscopy the group demonstrated that their technique is very powerful to study the mechanism of vibrational energy relaxation. (iii) Very impressing work of the group – published in „Biochemistry“ – is also their study on the two quaternary structures of hemoglobin (Hb), called T (tense) and R (relaxed), which correspond to the low-affinity and high-affinity states, respectively, and whose typical structures are seen for deoxy and CO-bound forms, respectively. They examined the Fe-His bonding of α heme and the intersubunit interactions at the α1-β2 contact of αNO-Hbs under various conditions with EPR and UV resonance Raman (UVRR) spectra excited at 235 nm, respectively. In particular, they present UVRR spectra for normal NOHb, the half-

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ligated αNO- βdeoxy, and the mixed ligated αNO- βCO in the presence and absence of an effector. From these studies they could derive valuable information on possible correlation between the Fe-His bonding of a hemes and intersubunit interactions at the α1-β2 interface for the quaternary structure change.

(iv) Applying time-resolved (0.1 to 5 ms) resonance Raman difference spectroscopy Professsor Kitagawa investigated the mechanism of dioxygen reduction catalyzed by cytochrome c oxidase (CcO), the terminal enzyme of the respiration chain of aerobic organisms. While extensive efforts have been made previously to elucidate the reaction mechanism of this enzyme using time- resolved absorption, cryogenic absorption, EPR, and non-time-resolved resonance Raman spectroscopy mainly by other groups, it has now been shown that the above mentioned technique applied by Prof. Kitagawa, is uniquely powerful for elucidation of the reaction mechanism of CcO, since only this technique is able to detect the vibrations of dioxygen and its reductive intermediates bound to the catalytic site during the enzymatic turnover. Their results —published in J. Am. Chem. Soc.— open a new page in understanding the mechanism of dioxygen reduction by CcO and its coupling with proton pumping. In a subsequent publication in the same journal, they explored the role of one of the four redox active metal centers (CuB) in the proton-pumping function of CcO by making use of time-resolved IR measurements.

Besides the above mentioned five papers which are of particular general interest and which rank as outstanding scientific achievements, Professor Kitagawa published another 41 papers in highly recognized journals during the last three years. He applies sophisticated experimental instrumentation to study a wide range of topical problems in the field of biomolecular science and fast dynamics of photoproducts in solution phases. The very high level of science performed in his laboratories has won worldwide recognition and I am sure that also other colleagues working in the field of Raman spectroscopy would join me to regard Professor Kitagawa as one of the leading scientists in the area of time-resolved Raman spectroscopy of biochemical molecules.

_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 訳文 加藤助教授のグループに対する報告

加藤助教授のグループの研究成果は大きく二つに分けられる: (i) 磁気共鳴のラマンヘテロダイン検出による固体中のサイト選択分光

この手法は1983年にIBMサンノゼ研究所のB rewerによって創始されたものであるが,その応用はこれまで無機結晶 中の不純物希土類イオンの分光に限られていた。この方法はラジオ波とレーザー光とを組み合わせて原子イオン中に コヒーレント状態を作り出し,そこからの反ストークス光とレーザー光とのビート信号を検出することによって MHz レンジの高分解能分光を可能にするものである。B rewer のグループはこの方法によって Pr

3+

イオンの超微細構造の研 究を行ったが,加藤助教授のグループはそれを L a

3+

イオンの研究に拡張した。まず最初に,僅か 1 MHz 程度しかない

3

Po状態の分裂を観測することを試みたが,レーザーの周波数ジッターが1.5–2 MHz 程度あったためこれは不成功に終 わった。しかしこの実験では,非常に興味深いことに,2–5 MHz レンジに新しい信号が見出された。これは,磁気双

極子相互作用の計算から,Prイオンの場合とは異なったサイトのL aイオンからの寄与であると解釈することが出来た。 しかし,最も画期的なことはこの方法を分子結晶に応用したことである。すなわち,この方法を逆ラマン型に転用す ることによって分子結晶の励起状態の超微細分裂を高分解能で分光することができ,その結果 1,4-dibromonaphthalene の三重項エキシトンを初めて観測することができた。この傑出した研究はPhys. Rev. Lett. 誌に掲載されている。 (ii) EPRおよびENDORによるフラーレンおよび金属内包フラーレンのラジカルイオンの分子・電子構造の研究

炭素ケージの中の金属の研究やこのような系全体の化学的性質およびそれらの金属の反応性の研究は一般に非常に

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